子どもはなぜ「誰にも言うな」と言うのか ー13歳の息子が教えてくれたSNSいじめの本当の怖さ

いじめ・不登校と子どもの心

SNSの暴力動画を見ながら、私は「正義」を考えていた

「動画を広めている人が一番悪いことをしていると思う。」

13歳の息子が、ぽつりと言いました。

私はその言葉に、ハッとしました。
いじめをした人ではなく、拡散している人が一番悪い、と。

大人の私は、加害者と被害者という構図で考えていました。
でも息子が怖れていたのは、少し違ったのかもしれません。

SNSいじめを、大人目線で考えてはいけない。
そう思った出来事でした。

「誰が一番悪いと思う?」と息子に聞かれた日

X(twitter)で、いじめや暴力の動画が次々と流れてくる時期がありました。

私はそれを見ながら、
「いじめをなくすにはどうしたらいいのだろう」と考えていました。

隠ぺいされず、明るみに出ることは、まず一歩前進なのかもしれない。
そんなふうに思っていたのです。

そんなある日、次男が私に聞きました。

「Ⅹの暴力動画って、誰が一番悪いと思う?」

私は迷わず答えました。

「加害者も、見ているだけの傍観者も悪いと思うよ。」

すると彼は、静かに言いました。

「僕はね、いじめに関係ないのに拡散している人が一番悪いと思う。」

「えっ…」

本当に、言葉を失いました。

いじめ被害に遭った次男の答えは、
私の中には存在していなかった答えでした。

なぜ息子は「拡散する人が一番悪い」と言ったのか

なぜ、拡散している人が一番悪いのだろう。

次男は、その後も同じようなことを何度か言いました。

きっと、動画の中の被害者の気持ちになって出てきた言葉なのだと思います。

私はそこで、ようやく気づきました。

いじめられている事実が広まるということは、
「被害者として有名になる」ということなのかもしれない。

「弱い人」というレッテルが貼られてしまう。

しかもそれは、一瞬では終わらない。
ネットに残れば、何度も再生され、何度も思い出される。

もしかしたら、
「大人になっても消えないかもしれない」

そんな恐怖が、子どもの中にはあるのではないでしょうか。

大人は「助けを求めなさい」と言う。
でも子どもは、「弱い自分を広めないで」と思っているのかもしれない。

「絶対に誰にも言うな」と言った本当の理由

以前、次男がいじめ被害に遭い、体に次々と不調がでました。
理由を聞いても、なかなか教えてくれません。

癇癪を起しながら、怒りの中で叫ぶ言葉。
私はそこから想像するしかありませんでした。

そして、ようやく事情を知ったとき、彼は必ず言いました。

「絶対に誰にも言うな。」

「誰にも言わないよ」と、私は一度は安心させました。

でも、先生に伝えなければ止まらない。
親としてはそう思ってしまう。

すると彼は言いました。

「自分で解決するから、事を大きくしないで。」

その言葉を聞いたとき、
私は自分の過去を思い出しました。

私自身が”可哀想な人”になりたくなかった過去

社員旅行で、同期の三人から避けられるいじめに遭いました。
周囲の人は、そんな私を”可哀想な人”を見る目で見ていたと思います。

私は必死でした。
「嫌われる原因がある人」と思われたくなくて、
ひとりにならないよう、他の人に必死で話しかけました。

被害者は未来の自分を守ろうとしている

あのときの私も、
被害そのものよりも
”そういう人”として見られることが怖かったのです。

いじめの被害者は、
被害に遭っている事実を隠さなければならない。

それは、将来の自分を守るため。

「嫌われる原因がある人」というレッテルを
背負って生きていくかもしれないという恐怖から
身を守るために。

子ども目線で考える、いじめ対策とは

では、私たちはどうすればいいのだろう。

「いじめをなくそう」と声を上げることも大切です。
でもそれだけでは足りないのかもしれません。

子どもが本当に怖れているのは、
いじめそのものだけではなく、
”弱い人として広まること”だからです。

だとしたら、必要なのはーー

・拡散を止める仕組み
・動画や投稿を安易に広めない教育
・被害を公にするかどうかを、子どもと一緒に決める姿勢
・「被害者=弱い人」という見方を変えていく大人の意識

「助けて」と言えない子どもを責めるのではなく、
言わなくても守られる仕組みを考えること。

それが、子ども目線の対策なのではないでしょうか。

あの日、息子が言った
「拡散している人が一番悪い」という言葉。

あれは、怒りではなく、
自分の尊厳を守りたいという叫びだったのだと、今は思います。

いじめをなくしたい。
でもその前に、
被害に遭った子どもの”未来”を守りたい。

大人の正義よりも、
子どもの尊厳を。

その視点から、もう一度対策を考えたいと思います。

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